筋ジストロフィは,遺伝子の変異によって筋肉が徐々に壊れる病気の総称です。 最も一般的な,Duchenne muscular dystrophy(デュシェンヌ筋ジストロフィ)と呼ばれるタイプの疾患は,dystrophinと呼ばれる遺伝子における変異によって発症し,必然的に麻痺や死を引き起こします。
イタリア,MilanのSan Raffaele科学研究所のGiulio Cossuらは以前,血管の壁にあるmesoangioblastと呼ばれる肝細胞を筋肉細胞に分化させることに成功し,それによって筋ジストロフィを患うマウスを治療することができたことを示しました。今回の実験では,よりヒトに近い傾向を示す実験動物として,dystrophin遺伝子に変異があるゴールデン・レトリバーを使用しました。
チームは,正常な犬から血管幹細胞を抽出して培養し,病気のイヌに毎月毎月,5回にわたって注射を行い,何千万もの細胞を注入しました。
通常ならば病気のイヌは,生後8ヶ月までに歩行障害に陥ります。 しかし,注射によって治療されたイヌの多くがそうはなりませんでした。そのうちの1個体に至っては,生後13ヶ月の時点においても上手に歩行しました。この研究成果は,Nature onlinkeで発表されます。
Cossuは『チームが既に,同等な肝細胞をヒトにおいても特定しており,2007年後半までには数人の患者で臨床試験を始められる。』と言います。しかし,その前により多くのイヌをテストする必要があるでしょう。『私たちは体当たりではありません。』Cossuは言います。
このタイプの治療が,『心筋や横隔膜を回復させられるかどうか』『幹細胞が体内の他の場所で望まれない副作用を引き起こすかどうか』ということが不明瞭です。
注射された肝細胞は血流に乗り,毛細血管の外へと染み出して体中に行き渡ります。肝細胞はそこで,欠損したdystrophyタンパク質を発現し,既存の筋繊維を接合することで繊維を若返らせます。
研究者は,筋ジストロフィを治療するために筋肉や骨髄などから抽出されたものなど,他の幹細胞でも調査しています。 しかしこれらの細胞は,わずかな筋繊維を蘇らせるか,効果を発揮させるために直接各筋肉に注入しなければなりませんでした。
『mesoangioblastの本当の利点は,血流に乗って体中のあらゆるところに辿り着けるということです。』と,カリフォルニアのStanford大学で筋ジストロフィを研究する神経科医Thomas Randoは言います。
幹細胞は多数の欠陥のある組織を作り直す方法ですが,未だにヒトによる試験に至っているものはありません。Randoは、筋ジストロフィは研究のターゲットに適した病気であると言います。というのも,注入された細胞が新たに組織を作るのではなく,細胞が既存の筋繊維をつなぐだけであるからです。
この方法では,病気の治療において拒絶反応を避けるために,患者は一生免疫抑制剤を飲み続けなければならないため,他人由来の細胞を使用するのは理想的とは言えません。
Cossuのチームは,この問題に一つの可能性を見出しました。彼らは,正常なdystrophin遺伝子を変異を起こした細胞の中に挿入するために,病気のイヌから幹細胞を抽出し,遺伝子療法を使用しました。そして"治療された"細胞を,そのイヌへ注入しました。
このように治療されたイヌはdystrophinを発現し始めましたが,それらは改善された様子は見受けられませんでした。Cossuは『dystrophin遺伝子(ヒトゲノムでダントツに大きい-250万塩基対以上-であるので,どこを治療すると良いか見つけるのは非常に困難で)の異なった方式(オーダーメード)を使用することによって改良されるかもしれない』と考えます。
筋ジストロフィを治療する他の方法は臨床試験に近づくことです。グループの中には,ウイルスを使用することでdystrophin遺伝子をすべての筋肉に挿入しようとしている研究者や,細胞が遺伝子における変異を無視し,訂正用紙のdystrophinタンパク質を発現するように促す薬剤を目指している研究者がいます。 『私たちが多方面からのアプローチを繋ぎ合わせたとき,私たちは本当の意味でアプローチをしているかもしれないと思います。』と,シアトルのWashington大学で筋ジストロフィを研究しているJeffrey Chamberlainは言います。